職人の技と「時」が生み育てる漆の美
悠久刃楼では、京都の漆工房にて、一点一点、職人の手によって漆塗りを施しています。
精密加工によって生み出された金属に、日本が長い歴史の中で育んできた伝統工芸を融合させることで、工業製品にはない温もりと、工芸品ならではの豊かな表情を宿しています。

漆とは、ウルシ科ウルシ属の木から採取される樹液を精製した天然塗料です。その歴史は縄文時代にまでさかのぼり、約九千年前の遺跡からも漆を用いた製品が発見されています。
世界でもこれほど長く受け継がれてきた塗装技術は珍しく、日本人は古くから器や家具、武具、仏具、寺社建築など、暮らしと文化のさまざまな場面で漆を活用してきました。

漆が今日まで受け継がれてきた理由は、その美しさだけではありません。
漆は空気中の水分を取り込みながらゆっくりと硬化する特殊な性質を持ち、優れた耐久性、耐水性、防腐性を備えています。適切に塗られた漆器は百年以上使用できるともいわれ、時を重ねるほどに艶を増し、使い手とともに表情を育てていきます。
大量生産では得られない「経年美化」こそ、天然素材である漆の大きな魅力です。

漆塗りは、一度塗れば完成するものではありません。
下地を丁寧に整え、薄く漆を塗り、温度と湿度が管理された漆室(むろ)で乾燥させます。その後、表面を研ぎ、再び漆を塗る。この工程を幾度も繰り返すことで、透明感のある深い艶と、滑らかで吸い付くような質感が生まれます。
刷毛の動かし方、漆の状態、その日の温度や湿度など、わずかな違いが仕上がりを左右するため、美しい漆塗りは長年の経験と繊細な感覚によって支えられています。

工業が形をつくり、工芸が魂を宿す
悠久刃楼では、この伝統技法を現代の精密加工技術と融合させました。
ミクロン単位で加工された金属部品は、高い精度と機能性を実現します。一方、漆は一本一本を人の手で仕上げるため、それぞれにわずかに異なる表情が生まれます。
工業が追求する均一性と、工芸が育む唯一無二の個性。
その二つが調和することで、機能性だけでは語れない、新しい価値が生まれると私たちは考えています。

私たちが漆を採用した理由は、単に美しい仕上げを求めたからではありません。
日本には世界に誇る高度な技術を持ちながら、その魅力が十分に知られていない工房や職人が数多く存在します。
その技術を現代のプロダクトへとつなぎ、新たな価値を創造するとともに、未来へ受け継いでいくことも、悠久刃楼の使命の一つです。
毎日手にする道具だからこそ、本物の素材に触れ、本物の手仕事を感じていただきたい。一本一本に重ねられた職人の技と想いは、金属に静かな生命感を宿し、使い手とともに歳月を重ねながら、その美しさを深めていきます。

― 工業が形をつくる。工芸が魂を宿す。
悠久刃楼は、その二つの技術が出会う場所でありたいと考えています。